オカリナ
もう何年前だろう、高校生くらいの頃、市内で一番大きな楽器屋があって、いつもそこへ通っていた。トランペットの輝きや、ずらりと並んだギターを眺めては、それだけで満足していた時がある。もちろんCDや楽譜はいつもそこで買っていたし、今ここにあるデジタルピアノもそのお店で買ったものだ。
さて、ある日いつものようにふらふらと店内を眺めていた時、ショーケースの中にポツリと置いてあったオカリナに目が留まった。何故か無性に欲しくなってしまった。お値段5000円。バイトしていた高校生にはそれほど高くない買い物だが、わざと購入を見送った。そもそもオカリナと言えば、500円くらいの安っぽいイメージを持っていたので、もっとよく調べてから決めようと思った。宗次郎の曲に出会ったのもこの頃で、今でもよく聞く。お値段20万もするオカリナがあるとか、ソプラノやアルト、F調やC調などいろんな種類があることも知った。
それで満足したのか、しばらくオカリナには見向きもしなくなってしまった。
そう。それがオカリナ。
ショーケースの中には相変わらずオカリナが飾ってあった。迷わず「これ下さい。」と「TiAmo Ocarina ソプラノF」を購入した。全てが手作りで調律もしっかりしていることで有名なこのオカリナを手に、僕は名古屋へ引っ越した。
結局音が出る楽器なので(音が出るのは当たり前だが、消音装置などが無いと言う意味で)あまり吹くことはなかったかもしれないが、素焼きの香りがとっても良くて、本来は吹くものなのに、思いっきり吸い込んだ事もあるくらい。そして、いつも見える場所においてある。あの時の自分の辛さとか、決意した勇気とか、いろんなものが詰まっている気がする大切な楽器なのだ。
10年以上経った今では、素焼きの香りは薄れたものの、思い出たっぷりの音色は衰えない。




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